ペアリングを外して

 ああ、また久美を泣かせてしまった。

 申し訳ない一方で、理不尽な怒りも治まらない。

 怒りが勝っていたその時は、もう久美と別れて本気で三村を奪うことさえ考えていた。

 お互いの正式な相手を優先すること。

 本気にはならないこと。

 ルールなんて、もはや関係がなくなっている。

 今の俺の癒しは完全に三村で、久美は悩みの種でしかないと思った。

 それでも自分の罪は隠し通したい。

 自分に都合の悪いようにはなって欲しくない。

 最低。

 わかっている。

 なのに俺は、泣いている久美を置いて彼女の部屋を出た。

 もう安心させてあげられるような言葉は思いつかない。

 抱きしめて頭を撫でてやることもできない。

 逆ギレして久美に冷たい態度を取る資格なんて、どこにもないのに。

 三村への気持ちと久美への気持ちが俺の中でバトルを繰り広げる。

 俺はこの時になって初めて、三村と再会した運命を責めた。


< 59 / 109 >

この作品をシェア

pagetop