甘い蜜
ゆっくりと深呼吸する。
ここで、上手くいけば何もかもがうまく進むだろう。
利用するのも…悪くない。
「えぇ………但し、条件があります」
「条件、だと?」
「はい。まず、真理子さんとの婚約を白紙にしてください」
親父は、目を見開いた。
俺は続ける。
「元々承諾なんかしてないので白紙なんて言葉は必要ないですけど」
「………私の話を聞いていたのか」
「勿論。ですが、麻生グループの力を借りずとも会社を成り立たせる」
何も経験はないが、なぜか自信はあった。
親父は、唸り考えた後、頷いた。
「………分かった。白紙に戻そう」