甘い蜜
「社長、イライラしないでください」
出勤した途端に葛城に言われた。
煩い、イライラしたい時もあるんだ。
俺は葛城を無視して椅子に腰掛ける。葛城はクスクス笑いながら机に書類を置いた。
「なにを笑っている」
「いぇ……」
含み笑いに、俺はハッとした。
「お前も麻理亜が何をしてるのか知ってるのか」
「私が?まさか。奥様とは数えるほどしか会話してませんよ?」
「………チッ」
「舌打ちをしないで下さい」
舌打ちより仕事を、と葛城に、俺は苛立ちをぶつけるように仕事に没頭した。