ももか

男は片方の手を伸ばしてももかの体に触れようとした。

「嫌だっ…!!」
出した声が自分でも驚くほど震えていて小さかった。男の手を振り払ったけど、ももかの反応が逆に男を興奮させたようだった。

その時、他の人が近づいてくる気配がしたみたいで男は走って逃げていった。


ももかは初めて恐い思いをして体が震えていたが、そのうち力が抜けて建物の壁に寄りかかった。

「はぁ…」

「大丈夫?危なかったね」
ヨシカズがももかの顔を覗き込んだ。
ももかは必死に笑顔をつくってぎこちなく微笑んで頷いてみせた。

「あの男、地下鉄の入り口からモモカちゃんを狙ってたみたいだったよ。でもモモカちゃんもあの男もいなくなるし、急いで来たんだけど何かされなかった?」
ヨシカズが助けようとして来てくれたんだ…。
で、髪を引っ張った犯人はあの気味の悪い男だった。
「大丈夫、何もされなかった。でもすごく恐かった…。あの男の目が恐かった…」
ヨシカズは所々頷いて、ももかが震えているのを感じて力強く体を抱き締めた。
暖かくて、香水の爽やかな香りがした。
男性の香水の香りって好き。いつまでも匂ってみたい。
ヨシカズがももかにキスをした。
ごく自然に唇が重なりあった。
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