俺が大人になった冬



俺たちは11時に表参道にあるビルの1階のカフェで会うことになった。

俺は少し早めに家を出て、デパ地下で適当な菓子の詰め合わせを買い、待ち合わせ場所に向かった。

今までの女は、皆ノコノコと1人でやってきて、思惑通りに誘いに乗ってきた。しかし、今回もそうなるとは限らないし、万が一俺を怪しんで他の人物を連れてきたときのための、つじつま合わせの『お礼の品』だ。

「昨日は本当にありがとうございました」

俺の予想通り、女は1人で俺に会いに来た。

この女、30歳そこそこに見えるけれど、実際はいくつなんだろう?

「ううん。お役に立ててよかった」

言いながら、女は小さく微笑む。

今までの女のような自信たっぷりの、挑発的な視線は感じない。

それどころか、なんとなくオドオドしていて表情も乏しい。

読みが外れたのか? なんだかペースがつかめない。
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