俺が大人になった冬
「こういうところ、いつも来るんですか?」

「いつもじゃないわ。今日は特別」

「特別?」

俺が不思議に思い尋ねると、

「あなたが一緒だから」

と、女は嬉しそうに笑った。

この女、なんなんだろう?

前から知っている間柄でもないのに、妙に嬉しそうで……

そんなに俺とヤリたいのか?

まぁ、金くれてヤラせてくれればなんでもいいけど。

しばらくすると、店の奴が来てカウンター席に案内された。

席につくとピカピカに磨かれた鉄板のカウンターの奥に、真っ白な背の高い帽子を被ったコックのおっさんが笑顔で立っていた。こんなおっさんが目の前にいるなんて、ますます落ち着かないと思いながらも、調理が始まると、おっさんの見事なナイフ裁きに目を奪われた。

女とこんな高級店で食事なんて、どうなることかと多少不安だったけれど、高級食材を使った料理や、いい感じに色々な話振ってくるおっさんのお陰で、思いのほか楽しい食事になった。

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