俺が大人になった冬



「母親は今、新しい男と、そいつとの子供と一緒に暮らしてると思う」

細かい話はしたくなかった。

俺がそれだけ告げると

「そうなの……」

彼女はそのまま言葉を詰まらせて、黙り込んでしまった。

ついこぼしてしまった自分の言葉で、一気にしんみりしてしまった空気を変えようと、『別に大した話じゃない』というように再び勢いよく弁当を頬張り

「あ! これもうまい!」

俺は得意の笑顔を作って彼女を見た。

すると、彼女は潤んだ瞳で俺を見つめ、

「頑張っているのね……元くんは」

と、いきなり小さい子供を慰めるときのように、ゆっくり俺の頭を撫でてきた。

子供扱いされて、本来ならムカつくところだ。
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