俺が大人になった冬
ああでもない、こうでもないと言いながら一緒にケーキを組み立てて、食事を始めたころにはもう一時を回っていた。
「メリークリスマス」
お互いに顔を見合わせて声を掛けながら、ささやかにジンジャエールで乾杯。
「昼間でただでさえ雰囲気で出ないのにさぁ! せめてシャンパン飲みてぇよ!」
「色は似ているじゃない。それに、元くん今日バイトでしょ?」
「そうだけどさ」
彼女の旦那は、会社のパーティーがあるとかで今日は帰りが遅いらしい。もっと早くに分かっていたら、バイトなんか入れなかったのに……
「新しいバイトはどう?」
今まで俺がどうやって生活費を稼いでいたのか、本当のことは相変わらず言っていない。別のバイトをしていたと、彼女は思っているようだ。
「このあいだ、川崎で輸入食品の仕分けのアルバイトを臨時でしたんだけど、荷物重いし、深夜だったから眠くてさ。それに比べるとコンビニは楽かも。」
「そう。大変だったのね」
「全然! 給料も日払いだったし結構いい仕事だったよ」