秘密
卒業式が終わった後、私は久しぶりに図書室へと向かった。
1年の頃に先輩に一目惚れして、毎日通い続けた図書室。
もう来ることは無いだろうと、図書室を一週してみることにした。
あれだけ毎日来ていたのに、本棚には知らない本ばかり。
実を言うと、図書室で本を借りたことは一度も無かった。
「……!」
図書室の一番奥の棚に来た時、それは見つかった。
ふいにあの日の会話が蘇る。
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『先輩のオススメの本って何ですか?』
『秘密』
『えー、教えてくださいよ』
『……お前さぁ、よく馬鹿って言われない?』
『ばっ、馬鹿!?私、これでも賢いほうですよ?』
『あっそ』
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先輩は、内緒という意味で『秘密』と言ったのではなかったのだ。
その証拠に、私の目の前には『秘密』という題名の本がある。
第二ボタンと供に……。
私はその本を抜き取り、ページをめくってみた。
〈この紙の意味がわからない奴は捨ててくれ〉
綺麗な文字で文章は書かれている。
裏を向けると
〈俺は、馬鹿なお前に懸けてみるよ〉
と、おそらく私にしかわからない一文と、携帯の番号が書かれていた。
私はポケットから黄色い携帯を取り出した。