狐の眠り姫
さっさとお参りを済まそうと思った葉は、目を丸くした。
狐の面を被り、じんべえを着た同い年くらいの少年が、賽銭箱の上であぐらをかいて座っている。
思わず凝視していると、少年が口を開いた。
「質の悪い物に憑かれてるね。」
葉は、「え?」と間抜けな声を上げた。
「このままじゃ、お前、長生き出来ないな。生気が悪霊に盗られてる。」
少年は、とん、と目の前に下りた。
「気が付かなかったのか?」
葉は、混乱したまま、「でも、私ちゃんとお参りしてるし。」と言った。
「低級の場合はそれでもいいが…、お前に憑いているのは高い位の霊だ。それも、ここまで力をつけるとなると、もうお前に憑いてからずいぶんたつな。ざっと見積もって十年くらいじゃないか?」
十年…。
目まいがした。
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