† 黒猫とクラウン †
† 捕獲 †
目の前にあったのは何本もの鉄の棒。

『ここ・・・檻の中?』

思わずつぶやいた僕の言葉に、見張りであろう妖怪2匹が振り向いた。

『お目覚めになられましたか?』

遠くてよく分からないが、どちらも口元に笑みをたたえている・・・。

『それにしても、天下の黒牙様が檻に入っている光景をこの目で見られるなんて。・・・クスクスッ』
なんだか、自分が本物の黒牙ではないものの、見張りの言い方に無性に腹が立った。

その瞬間、奇妙な感覚に襲われた。

まるで自分の体がのっとられたような不思議な感覚。

『わしが檻に入っているのはそんなに滑稽か?ならば遠慮せずに笑うがいい。だが覚えておれ。こんな鉄の棒など、わしには小枝も同じ。すぐにでもここから出られるが・・・。生憎、ここを逃げ出す理由が無いからな。・・・いいか?つまりこういうことだ。わしを怒らせたその瞬間、お前らの首はその体から無くなるものと思え。あはははははっ!!』

僕の口が言葉を発するにつれ、見張りの2匹の顔がみるみる青ざめていった。

でも、

(・・・違う!僕じゃない!・・・じゃあ今しゃべったのは誰だ!?)


勝手に動いた自分の口に驚いた。

そして、

(驚かせてすまんな。お前の体を貸してもらった。わしはおぬしの血に眠る黒牙だ。またこういうことがあるやもしれん。・・・気をつけろよ?)
頭の中に響いてきた声。

月影と最初に交わした言葉よりも、頭にハッキリと響いた。

見張りを見ると、先程までの態度が嘘のように、すっかり僕を怖がってしまっている。

(おい、分かったのか?)

(あ・・・。う、うん。分かった)



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