† 黒猫とクラウン †
(まぁ、危なくなったら、さっきも言ったがまたわしが出てくるがな)

声はそれだけ言うと、頭の中から存在を消した。

『あ、あの、ご無礼をお許しください・・・。』

声に振り向くと、見張り2匹が頭を下げていた。

『あのさ、檻に閉じ込められて無礼を許せって言われても、いまいち受け入れられないんだけど?』
僕のその言葉に、2匹は困ったような怯えたような表情をした。

『ボ、ボスのお許しがないと、我々にあなた様を自由にすることは出来ません。・・・ど、どうすれば?』
なんかもう、どうでも良くなってきた。

『いいよ。このままで。逃げようと思えばいつでも出来るし。あと、お前らが僕にそう気を使ってたら、ボスって奴に怒られるんじゃないのか?』
僕の言葉に、2匹は顔を見合わせ、再び僕を見た。

そして1匹がこう言った。

『何故、そんなにお優しいのですか?』

『・・・。何故?何故って聞かれても、特に意味はないよ。っていうか、僕何か特別お前らに優しくしたか?』
そう言うと、2匹はなにやら話し込み、そしてうなずきあった。

『黒牙様。我々をあなたの家来にしてください!お願いします!』

・・・いきなりそんなことを言われて、「はい」と答える奴はいない。

けど、別に断る理由も無い。

『うーん・・・。かまわないけど、本当にいいの?その・・・主人が僕なんかで。』

『あなた様になら、全力でおつかえすることが出来そうなんです。ボスは家来の扱いがひどすぎる。もうあの方にはおつかえ出来ない。』
『そんな理由で、本当にいいんだね?』

『はい!』

その返事を聞いたとたん、僕は「契約」の仕方を本能的に理解した。

本能に従い、立ち上がる。

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