苦笑した先生に、つられて笑った。










「先生…?」







さよなら、先生。











「あたしと、別れて下さい」












「え?」










言っちゃった…







聞き間違いとでも思ったのだろう。





カルテをめくる手を止めると、あたしに疑問の視線を投げかけた。









「聞こえませんでしたか?」





いやだよ。



「もうあたしと、別れてほしいんです」




ホントはこんなこと言いたくない。





「あたし先生のことそんなに好きじゃないし」






ホントは凄く愛しい。






「もっといっぱい会いたいから、忙しくない人がいいし」







誰よりも患者さんのために一生懸命な姿、本当に好きです。









「だから」







さよなら








「もう、さよなら」









きっともう二度と見ることがないであろう先生の目を、真っ直ぐ見つめてそう言った。












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