きみに守られて
栗色で木の温もりを感じさせる床に
奥深く溜まっていた彼女の
透明な涙が静かに落ち、
染みた床は
そこだけ花が咲いたような
模様をつけていた。

ユリツキは言葉の代わりに
恐る恐る彼女の艶やか褐色の髪に
手を触れ、
少しでもしのぶ心を伝えようとしたが、
触れた瞬間に
自分の存在価値が
解ったような気がしていた。

優里は
細い腕をユリツキの体にまわし
胸に顔をうずめる。

「ぼくはどれくらい
意識を失っていたの?」

「一年と少し・・」

「そんなに・・。
沢山迷惑かけたね、
ぼくを救ってくれてありがとう」

触れるだけで
壊れてしまいそうな華奢な体で
優里は、
口を動かすにもままならない程
強く押し付けたユリツキの胸の中で
もぞもぞと口を開く。
「私は何もしていないよ、
ユリ兄を信じていただけだもん」


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