きみに守られて
「お嬢さん、いったいどちらまで・・」
「ちょっとそこまで。」

「ようよう、
いい加減何処に行くか教えろよ~」

「ホトトギス!」

「ホトトギス?」

「そう、ホトトギス!
ヒントはここまでね」

(ホトトギス?ホトトギス??)
と、連呼した。

女の子が一人で来るには
多少きつめの木の根やら窪みがある山道を、
優里は慣れた様子で歩いて行く。
そんな彼女の背中を
しんみり見詰めながら、

「鳴かぬなら殺してしまえ、ホトトギス」
とユリツキは言った。

「鳴かぬなら鳴かしてしまえ、ホトトギス」
優里は言い返した。

状況が読めないユリツキは
とりあえず
「鳴かぬなら鳴くまで待とう、ホトトギス」
と、言う。

とりあえず、言っとけ、みたいに。

優里が立ち止まる。

少し開けた明るい陽があたりそうな
林床がある。

そこには釣鐘型の
小さい野草の白に
紫の斑点がある花が咲いていた。

「これ、ホトトギスって名前の花よ」

優里が宝石でも触るような、
慎重で、
優しい力加減で
その二センチ程の花を説明する。

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