きみに守られて
ユリツキは腕組みをして真剣に考えた。

「そうだな、難しいな。
やっぱりね、出会った頃の、
そのでっかい目玉に
突き刺さりそうな前髪で。
ダボっと、
そのちっちゃい胸まで
たれ下がっていた長い髪の毛?
あんな感じの髪形がいいかな」

「言ってる意味全然解らないけど。
出会った頃の髪型ならわかるよ。
それでいるからね、じゃ、またね」

「うん!また会おう」と、
ユリツキが言った。

「ばいばいまたね」
優里は後ろ向きで
ユリツキの目を見つめたまま、
体が薄くなる。
「またすぐ会えるね・・
今度は同じ歳だね・・」
優里は小さく手をふる。
優里の体は透明になり、跡形もなく
消え去った。

見送ったユリツキは
神様の真正面に立つ。

「さっきの話し何処までが本当で、
どこまでが嘘か分からないですけど、
俺に協力してもらって
有難うございました。」

ユリツキは心の中で
神に祈り訴えていた。

「俺とユリの年代のづれ、
出会いのづれ、
神様が十六才の大島優里を選んだのは、
正樹と出会う前でなければならなかった
そして16歳の俺は未熟だった・・」

「もう解っているんだろう。
さっき、あの子の心を読んだ。
河元君を本気で好きだぞ。
彼女は完璧な心の持ち主だ。
少しは楽しかっただろうよ?」

「ああ、有り余る程の幸福だったよ」

ユリツキは神に質問をする。

「裏の世界で俺が殺めた人々、
彼らは人のようで
人では無いような気がした。
でも、何故だろうか、
とても貴重な存在に思えた。
教えて欲しい、あれは誰ですか?」

神は、まるで
何度もこの会話を経験したような
落ち付きを持って、
そこに存在していた。

空気が重々しくなる。
ある存在が物を語るように
言葉を紡ぎ出す。

神聖な怒りのように。

「あれは”ただの器”だ。
オイラが人間達のウミの受け皿として
送り込んだ器の者たちだ。
ウミよ。
器よ。
お前に
感謝する。」


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