きみに守られて
再び、裏らしき、
出入り口らしき、
ユリツキの世界。

深く静まり返る空間。

動き出そうとする時間の気配が、
春の、
雨上がりの生暖かい
爬虫類の死骸のような臭いで、
漂ってきた。

「ユリツキ、本当にご苦労だったな、
大量のウミを引き受けてくれて
ありがとうよ。オイラを恨むかい?」

「いや・・
思い返せば面白い人生だったよ、
でしたよ。」


「そうかい?ゆっくり眠りな。
それにその願いは叶えてやる」
と、神は言った。

ユリツキは願っていた。
”優里から貰った赤い輪ゴムは
もとの世界に持って帰りたい”と。


ユリツキは
鼻の頭を照れくさそうに触り、
再び会える愛しい者の方へ歩きだした。

三年前は勢い良く走り出した同じ道を、
ゆっくりと踏みしめるように進んだ。

一瞬で、ユリツキはあの日の、
あの服装に戻る。


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