きみに守られて
前に進むにつれ
その臭いはきつくなる。
異臭だ。
むんむんと生臭いような
腐敗臭が鼻の中に土足で入りこむ。
口で呼吸をすれば楽になるだろうと
思うのだが、
その物事態が
口に飛びこんできそうで、抵抗を感じた。

右手の裾で鼻を隠し、
自然に脚の動きが速くなるが、
右目の隅に物体が映りこみ
ガラス窓にぶち当たったように
ピタっと立ち止まる。

顔を向けるだけでその物体が何か、
確実に確認できる。
右目だけしか見ていないから、
見なかった事にも出来ると
言い聞かせる。
両目を左側に向けて、
素通りすれば問題無いと思う。
そう思うと余計に左目も向けたい
という欲求が沸沸湧上る。

両目の目線をその物体にむけた。

強い悪臭の元が完璧に目に飛びこむが、
他の通行人は平気で歩いていた。

それは車道と歩道の間に転がる物体。

人間の死体だった。

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