きみに守られて
(もっと違う形で
表の世界で
会っていれば、
もっと心も浮かれて
無限の空間が広がっていた事だろう。
もっとドラマ的に
出会えていれば運命も
変わっていただろうに。
首吊り死体の前でなかったら)

ほんの一瞬そんな考えが
脳裏をよぎっていた。

恐れ震える彼女を
まるで地面から引き抜くように立たせる。

ユリツキより10センチ弱程
彼女の背は低かった。
が、
それでも女の子では高い方だろう。

その場を去ろうとすると
事務所の扉が開いた。

見たことがある女性が立っている。

女優大島優里を育て、
良き理解者である
所属事務所の社長だった。

もちろん表の現実世界の話であるのは
理解していた。

「貴方たち?
人の事務所前で大声だしたの?
あら?まだ引き取りに来ていないの?
まったく親の義務ぐらい
はたせないのかしらね」
ぶら下がっている少女の足を
ペンのような物で、
突つきながら迷惑そうな声を響かせた。

「その女の子、
何故そんな所で首吊ってるのですか?」
勤めて冷静に尋ねるユリツキ。

「うちの事務所の子よ。
せっかくデビューさせてあげたのに
売れなくて、オカシクなって
このありさま。
当て付けにこんな所で首くくって、
こっちはいい迷惑よ。
どうせ死ぬなら元とってから
死ねばよかったのに」

そう言い放ち今度は手の甲で
少女の脹脛を叩く。

少女は似合っていたであろう
白いワンピースを着ているが、
裾の部分とフリルの飾りがついた
、白いソックスは失禁で黄ばんでいた。
叩かれて揺れた体は、
重力に魅入られ
風に襲われた如くに、
首がまた少し伸びたように見えた。


大島優里をじっと見た社長
「あなた可愛いわね、
うちで面倒みましょうか?
当たればデカイわよ」
虫唾が走る程の卑しい目をしていた。

「いえ、この人は違います」
乾いた声でユリツキは言い放ち、
立ちすくむ大島優里を歩かせ、
逃げるように去っていく

「あら残念ね」
女社長は腕組をして、
口惜しいそうに二人を見送った。

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