きみに守られて
(何から説明すればいいのだろうか?)

事情を解りやすく話せるかに
底知れぬ不安を抱いて、
一分先が見えない世界にいた。

青い空に小さな白い雲が、
一欠けら、
置き去りにされていた。

公園で何かを啄ばむ鳩が
小忙しく頭を振り動き回る。

風景だけは優しかった。
景色だけは柔らかい。

気持ち良く映る風景、
頬を触る風ですら安穏としているのに、
今この時がユリツキの、
悲しい現実。

「君、大島優里さんだよね」

解り切っていた言葉を、
顔を見る事なくかける。

それしか無かった。

不審者を見る大島優里の眼が一瞬、
振り向く。
目の力に押され、
臆したように下唇を噛み、
伏目になるユリツキ。

「なぜ私の名前知ってるのですか?
私たち会った事ありますか?」


「うん・・」
迷う者が適当に言う語気。
その先の言葉が出てこない。

大島優里の顔があまりにも近すぎた。

「私、もう一人で歩けますから」

体全体が
”もうほっといて”と云っていた。

ユリツキは
”花いちもんめ”の
最後の一人の気分になった。


「あの・・あの・・あのさ・・」


届かない小声。
やり場ない淋しい心。
伝える術ない切なさ。

迷いながら目線を上げると
驚く程に彼女は遠のいていた。

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