きみに守られて
人通りが疎らな路地裏の左端を、
白線に沿うように歩いて行く後姿に、
距離だけは保たなければと、
足音を消すように駈足で追った。

「なにか変よ、なにかが変わってる、
人が死んでるのに・・・」
嘆きにも似た
弱弱しい優里の声。

「ぼくの話しを聞いて貰いたい。
大事な話しなんだ・・」

意を決して彼女の前へ回り込んだが、
それは彼女を半歩後退させ、
右側へ半歩移動させた。


その一連の動きは滑らかであり、
可憐で滑らかで、
冷やかにユリツキを避け切った。

全速力で逃げ出しそうな彼女は、
一瞬の一吹きで消えそうな
蝋燭の灯火のようでもあった。

彼女は氷のトゲをまとい
武装したように見える。

幼き頃から
”否定”され続けた世界で育った男は、
無言でうつむく。 卑屈になるのだ。

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