きみに守られて
表参道駅をでて
青山通りへ向かう。
うつむきながら歩くユリツキを
通りすぎた女性たちが
振り返る。
背が高く細い体は人混みで
目立った。

ユリツキは
いつもの場所で立ち止まり
その時だけ空を見上げた。

ビルの屋上に設置してある
看板だった。
芸能人がキレイな笑顔を見せている
広告を見るのがユリツキの
ささやかな楽しみだった。

その女の子の笑顔を見ていると
自分が少しだけ
優しくなれたような気がする。

そして、

彼女とは

どこかで

出会ったような懐かしい

気持ちにもなれたのだ。

初恋の人にイジメられた
ユリツキに過去、
恋人などいなかった。
だから、出会ったような記憶は
あり得ないのだ。
それは、
ユリツキ自身、
理解していた。
そして、
こんな勘違いが
心の中に
ストーカーを産むかもしれない
と、想像もしていた。

”彼女がぼくを知っているなんて
ありえない・・・”


ユリツキはうつむき、
誰とも目を合わせないように
アルバイト先の
建築現場に歩き始めた。

< 5 / 198 >

この作品をシェア

pagetop