きみに守られて
「他の仕事探そうよ?
あんな場所にまで立ってまでユリ兄が戦う事ないよ、
絶対人が死ぬんだもん。
そんなにしてまでお金いらないよ」

「確かにあまり気がのらない。
でも、ぼくにできる仕事といえば
建築現場で作業員として働くだけだし、
そっちも気が進まない、
あの仕事はしたくない」

「どうして?りっぱな仕事よ?
経験が活かせるって良い事でしょう?」

「でもね、
好きで選んでやってきた仕事じゃない。
食っていくために、誰でもできて、
ぼくみたいに学歴が無いヤツでも
簡単にできるからやっていた仕事だから。
国に税金を納める奴隷のような、
そんな印象の場所にまた戻るのはつらい。
もう作業帽はかぶりたくない」

「そうなんだ・・・
ユリ兄の気持ちに任せる。
ユリ兄が決めた事に私は賛成するから。
でも、人をころしたい訳じゃないのよね?」

「うん、そうだよ」

「ごめんね変なこと言って、
私、ユリ兄の辛い気持ち
少しでも和らげたいって思っているから、
ちょっとでも理解したいって
思っているからね。
生意気な事言ってるけど本心だからね。
一人で抱え込むって、しないでね、
私はいつでも側にいるから・・」


ユリツキは小さな嘘をついた気がしていた。

他の仕事を選ぶと優里から
目離す事にもなったが、
それ以外にも複雑な心境を持っていた。

小さな嘘には小さな罪がある。
誤解や相手を思いやる心もある。

小さな嘘には数多くの
解決策が付きまとうが
それに気付かず時間に転がされ、
小さな嘘は
利己と虚栄を巻きこみ肥大もしていく。


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