きみに守られて
一年が過ぎた頃には
二人は会う事は一切なくなって
ユリツキにしてみたら、
会いたいと思う気持ちさえも、
消えていた。

あるいは自ら
忘却の底へ身を沈めたと
いうべきだろうか。

世の中は変化した。

無闇に街中で人を殺さなくなり、
殺人犯はユリツキの前に放りだされた。

群衆は己が手を下すよりも
その圧倒的な強さを持つ者へ、
自分を移し見して殺戮感快楽を得た
”俺ならこうやって殺す”
”いや違うこうだ!”
ハッキリとした意見をもちながらも、
曖昧でいい加減な民族は行動できず、
他人に依存して
高みの見物を気取る。

元来、
大人数で一人をやる事しかできない者が
殆どなので、
たった一人で戦い続ける男に
酔狂するのは当然であった。

かつての心が消えうせたユリツキは、
この世界の住人に成り下がっていた。

いや、この”世界”をその身体に
吸収し始めていた。

すべてを、引き受けるのだ。

優里は涙目をこする事は止め、
たった一つの繋がりである、
毎日届くユリツキの血塗られた金で郊外の
”変人たちの町”
という所に広大な土地を買い、
家を建て、ささやかな
自分の世界を完成させた。

ユリツキは
かつて優里と暮らした住居へ行く。
物が消えた優里の部屋を見て
肩を落とし呟いた。

「ぼくはまた見捨てられた」と。

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