幾千の夜を越え
屈辱的だ。

「やっぱりそうやったか…。
こいつは右近の印やで!」

痣を確認してもらう為とはいえ
左山の前でズボンを下げた俺は
敗北感に見舞われ落ち込む。

「聞いとんのか?」

「ああ…右近の判なんだろ…」

「こいつは右近が力を自分で封印したちゅうことやで…」

考え込んで黙ってしまった左山に

「何の為に封印するんだよ?」

疑問を投げ掛ける。

「知らん!
何処に封印したかも
俺にはわからん…。
ただ言えんのんは右近が目覚めるんを邪魔しとるんが右近やちゅうことだけやな…」

右近が右近の邪魔するって
意味がわからないだろ?

結局、
右近の印を見せる必要があったのかさえも疑問に残った。

「まあええわ。
右近は暫く大人しゅうしときや」

不敵な笑いを残し
左山が去って行った。

1人取り残されると
余計に恥ずかしさが
ふつふつと沸き上がる。

もう一歩も動きたくない気持ちと早く逃げ出したい気持ちで。

訳もわからず叫びたくなる。

もうどうでも良い…。

右近だの力だの…尊だの…。

何もかも忘れてしまいたい。

中途半端な目覚めは
ただ俺を悩ませ苦しませるだけで

右近を理解出来ないままだ。

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