幾千の夜を越え

感情が身体を支配するのか
気だるい感覚を抱えたまま
今日も1人帰路に着く。

もう何日葵に会っていないだろう葵は平気なのだろうか？

実際は葵に会えなくて支障があるのは俺の方なのだろうか？

正直言えば今すぐにでも葵が
欲しい。

だが…
俺の中には確かに右近が居て
私情を圧し殺し堪えている。

それを知っていて、
無下には出来ない。

ほんの数ヶ月前に戻るだけだ…。

あの耐え難い柵の中へ
身を投じるだけなんだ。

身体の奥底から本当に欲して、
手に入れられないやるせなさを
別のナニか…で無理矢理にでも
埋めようと足掻き…。

失意の波を漂い続ける。

あの空虚な俺に戻るんだ。

違う！

あの頃と同じには戻れない。

葵が尊であることを知った今…。

右近の存在を認識した今…。

同じになど戻れるはずがない。

右近が自らの想いを遂げずにいたのは尊を守る為に他ならない。

例え葵が尊でなくとも
俺が葵を守りたいと思う様に…。

焦げ付く想いに翻弄されずに
葵の…尊の一番近くで守る。

葵の柔らかさを
葵の温かさを
唇の弾力を
抱き締め合った感覚を

少しでも知っている今

戻ることが何れ程の苦痛を伴ったとしても…。