【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
そんなタイミングで人がいると思ってなかったらしく、
相手も驚き、ちょっと止まっている。
私はすぐに俯いたけど、その一瞬でもユキトさんだとわかった。
ドキドキと心臓が早鐘を打ち、血流が速くなる。
頬が熱い。
「すみません……っ」
俯き慌ててよけた私に、柔らかい声が降り注いだ。
「いや、こちらこそ」
ふ、と空気が緩む。
彼の口元に笑みが浮かべられているのだろうと、声の雰囲気から容易に想像がつく。
「ありがとう」
扉をくぐりながら、よけたことへのお礼の言葉を追加してくれた。
私は「いえ……」と曖昧に返事をすると、
すり抜けて廊下へ出ようとした。
その背後で、舌打ちが聞こえ、振り返らなくとも主がわかった。
秋月会長だ。
真意はわからないけど、
なんだか私の鈍くささ等をなじってのものであるように感じて、
私は退室の挨拶をするのも忘れ、
振り切るように早足でその場を離れた。