【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
その発信源は秋月会長で。
小さな微かな音だったけど、私へ、苛ついた印象を与えるには充分だった。
苛つきの対象が、私へなのか今目の前にいるこの人へなのかまではわからなかったけれども。
茶髪の彼は、私より秋月に近い位置にいるから、
舌打ちが聞こえなかった筈はないのに、全く気付かない素振りで私に話しかけてくる。
「俺、夏木 優(ナツキ ユウ)っていうんだ。ナツキね。“さん”とかいらないから。よろしく」
秋月会長の舌打ちは少しだけ心に引っかかってたけど、
にこ、とナツキに笑みを向けられたら、私もおざなりながら笑みを返さざるを得ない。
「私は藍川です。藍川結香」
私が名乗ると、ナツキは『知ってる』と言ってイタズラっ子みたいに笑った。
「そういえば、なんで私の名前……」
昨日訊けなかった当然の疑問を口にした私に、ややあってナツキは口を開きかけた。
「ああ、名前? だって──」
「ナツキ」
言葉を遮る勢いで、名指して制す秋月会長。
ナツキはチラと秋月会長を見て、私に再び笑みを向けた。
意味深に。