未来のない優しさ
昨日会社から直接連れて来られたホテル。
予約してあった部屋は、スィートではないにしても結構豪華な内装。

多分、葵ちゃんが結婚式を挙げるホテルだ…。

そんな高級ホテルに泊まるなんてどうしてなのかわからない。

時計は8時を回ったところ。
普段より少しだけ長く休めた体の調子は良さそうでホッとする。

しばらく健吾の寝顔を見た後、コーヒーでも飲もうとそっと起き上がった途端。

あれ…?

感じる違和感が私を不安にさせる。

いつもなら胸元に触れる指輪が…ない。

ばっと両手を首にあてても、指輪を通しているチェーンもなくて。

「やだ…。どうしよう…」

周りを見回して、シーツをめくってみても何もない。
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