未来のない優しさ
上半身裸の健吾。
唯一身につけているのは私の指輪…。

チェーンに指を差し入れて、指輪を揺らしている。

「なんで…?健吾が…」

か細い声で問いかけても、からかうように指輪を揺らす健吾はちゃんと答えてくれなくて、唇を歪めて小さく頷いた。

「そりゃ、びっくりするな。
この指輪はもう…お役御免だ」

私の肩を押さえる手が離れて、ゆっくり健吾は起き上がった。

「熊本にいた時…男除けに使ってたんだな。
やっぱり、俺の事ずっと思ってくれてたのは…正直ホッとした。

だけど、もっと強力な男除け、用意したから」

健吾の言葉の殆どを理解できないまま、脳をフル稼動させていると。
避ける間もないうちに唇が落とされた。

「ん…」

その熱が私を徐々に満たしていく…。
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