未来のない優しさ
柚と改めて特別な距離の中で付き合うようになって、体を重ねるようになって。

それでも柚の瞳の中に見える寂しさや不安に気付いていた。

結婚をためらう気持ちの理由も…。
薄々わかっていたけれど。
その理由を盾に、俺の部屋で暮らす事をはっきりと拒否されると、予想以上につらくて痛い。

俺の部屋に出入りする女の姿を何度か見た事のある柚。

そのほとんどは望。

誰がどう見ても美人な部類に入る望を見た時の、
柚の諦めに似た会釈…。
何も感じない風に通り過ぎる後ろ姿を追って、何度抱きしめようとしたか。

きっと、俺の部屋で女を抱く事は一度もなかったって言っても…今更信じないだろうな。

何度か部屋にあげた望とも、寝る事はなかった。
もともと、本気で女と付き合う気はなかった俺は、部屋に女が寄り付かないように必要最低限のものしか置いてない。
< 326 / 433 >

この作品をシェア

pagetop