未来のない優しさ
「…とりあえず、シャワー浴びてくるよ」

「あ…ごめん…」

私が香りの事を言ったから…。

「確かに甘ったるいな。
この香りは。

…一緒にシャワー浴びるか?」

浴室に向かいながら、いたずらな笑いを私に見せる健吾は

「…望と何もなかったとは言わない。

あいつを大切に思ってるのも確かだけど。

体の全部で愛して、欲しいのは柚だけだから。
昔の事で不安になっても嫉妬しても…。

俺にはこれから柚を側に置いて愛しながら安心させるしかできない。

俺の戸籍に縛りつけてやるから覚悟しろ」

ニヤリと笑う顔には今までにない自信を感じた。
私への遠慮や罪悪感を隠しきれない表情を何度も見て心が痛かったけれど、ある意味自分勝手でわがままな言葉に気持ちが緩んでしまった。

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