成長する
一体全体、なにが、どうなっているのだろう。

担任は溜め息とともに懐中時計を手に取り、開いた。美幸が感覚で数えているよりも約四分、早い。しかし、チャイムは鳴った。早いのは時計ではない……美幸が、遅いのだ。

「知らないなら、仕方がない……。教室に戻れ。もう授業が始まるから、静かにな」

「は、はい……」

今までとは違った理由で俯きながら、美幸は職員室をあとにした。

少女の姿をした化け物――足をもがれて殺された琴美――愛を囁いてきた兄――目を閉じたまま話す謎の女性――理由もわからず消失してしまった美幸――初めて狂った体内時計――

「もう、なにが、どうなってるの……」

泣きそうになりながら、美幸は、教室には戻らなかった。

そして、二日連続で、学校をサボった。

ドキドキもハラハラも、もうなかった。






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