クロスロードラヴァーズ
リンゴの味











「久しぶり、梓ちゃん……。元気……だった?」


夏休み最終日の夕方。

宇都町家に、一人の少女が訪れた。


紅いリボンで束ねられたストレートの長い黒髪と、オレンジがかった瞳を持つ高校生ぐらいの少女……橋口 柚枝。

秋を先取りした茶色いチェック柄のシャツを着ているが、大きいサイズのようで少しだぼついている。



「柚枝……。本当、久しぶりだね。聖河のお見舞いの帰り?」


やや皮肉調で応対したのは、住人である宇都町 梓。

茶色いパーマ髪は風にふわりと靡き、カラコンが入った赤い瞳は柚枝を真っ直ぐに見返している。

こちらは季節相応の水玉キャミに半ズボン姿。



「今日は……行ってないよ。宿題終わらせてたから……。」
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