クロスロードラヴァーズ


「そうなんだ?私はまだ宿題終わってないから、急用じゃないなら帰って……」


「うち……フラれた。」


柚枝の消え入るような呟き声が、梓の言葉を遮る。

瞳には涙が浮かび、両肩が震えている。



「えっ?」


「梓ー!チャーハンできたよ……って、柚枝?ケンカ……しているのか?」


左手にしゃもじを持ってダイニングから走って来た青年は、柚枝の顔と梓の顔を交互に見て首を傾げた。

後ろで一つ結びにした栗色の髪と、澄んだ茶色い瞳を持つ彼は梓の兄の宇都町 柳都である。

普段から家事をこなしているようで、バンダナにエプロンという姿が妙に板についていた。



「柳都……兄さん……。」


「あっ……よ、良かったら夕飯食べていくかい、柚枝?作りすぎたからさ。」


「でも、うち……」
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