恋するために生まれた
まるで妻に言われているような気がして、俺はドキッとした。


そんな俺にお構いなしに
ナオは続けた。



「夫はね、本当は
 私の姉が好きなの」

「そんな…」

「本当の、ことなのよ」





――抱きしめたい。

そう、思った。


ナオの孤独に
少しだけ触れた気がした。



「お互いさまよ。
 私も夫を愛してなんかいない」

「…そうなのか?」

「お見合いだったの。
 特に望んだ結婚ではないわ」

「でも、決めたのはナオだろう?」



ナオは遠くを見つめるような
ビー玉のような瞳で言った。





「私は条件と結婚したのよ」



何も言えなかった。
ナオのはかなげな美しさは
きっと孤独で出来ている。

ナオの持つ、深い闇に
俺は一緒に沈んでもいいって
そう思ってしまったんだ。
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