恋するために生まれた
それから一ヶ月が過ぎた。
あのバーには行っていないし
もちろんナオには会っていない。

電車からも
ナオは姿を消した。



妻はツワリが重く
入退院を繰り返している。

一人で外で食事をして帰ることが日課になりつつあった。
今日もどこかで夕食を食べようと
人で溢れる新宿の街を歩く。






――ふと、ナオを感じた。

振り返ると、
本物のナオが、そこにいた。





「ナオ!」

人目も気にせず叫んだ。
振り返ったナオは俺に気付くと
その大きな目から涙をこぼした。


「ナオッ…!」

駆け寄って、抱きしめる。

どうして
こんなにたくさんの人がいるのに
君を見つけてしまうんだろう。

どうして
君がいないとダメなんだろう。



「会いたかった…」



泣きじゃくるナオを見て
俺は
決心をしたんだ。
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