ジュリエットに愛の花束を。

凍る心



「瑞希、そろそろ来るんじゃない?」


皐の言葉に、ケータイの時計に目を落とす。

12時48分。

そろそろ、プリン争奪戦が終わる頃だ。


中庭でメロンパンを食べながら、これから起こるであろう事にため息を落とす。


「じゃあ気合い入れなくちゃ」


そう呟いて、残ったメロンパンを口に詰め込んで、いちごオレで流し込む。

なんか口の中がトロピカルになってるけど、そんなの気にしてる場合じゃないし。


ごくん、と音を立てて飲み込んだ時、渡り廊下を歩く松永の姿が見えた。

そして、あたしを発見するなり、笑顔で手を振って近づいてくる。


あの笑顔じゃ、また勝ち取ったんだな、プリン……。


だけど、そんな予想に反して、松永はあたしの前にくるなり両手を合わせた。


「ごめん! 今日はプリン取れなかった!!」


松永の言葉に、拍子抜けする。

今まで全勝してたのに……。


あたしが少し意外に思っていると、松永が不思議そうに首を傾げる。




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