白き砦〈レイオノレー〉
もしそれが当たっているなら、目の前に繰り広げられている情景の不可解さにも答えが与えられると思った。
(たぶんここに、あの公爵が英国から伴ってきた姫君でもいたのだろう。
そして運悪く賊たちの逃亡に巻き込まれた。
それを公爵が救いに出たのだ。
そうでもなければあの公爵が、自ら進んで他国の事件などに関わり合うはずがない)
デュークは確信し、意を決したようにフロベールを顧みた。
「わたしは、もうひとりを連れ戻しに行って来る。もうひとりはおそらくまだ生きている
だろうから」
「えっ」とフロベールは、驚いたように見返った。
「その男はどこにいるのです?」
「この塀の中だ」
「塀の中ですって? まさかあの館へ行かれるのでは?」
フロベールが、あからさまに不安な様子を示した。
「一度陛下にご報告して、陛下のお名で正式な使者を立てていただいてから、伺ったほう
がよろしいのでは――」
「そんなしち面倒くさい手続きを踏んでいたら、明らかにできるものもできなくなるよ。
一人がこれでは、もう一人とて、いつまで持つかわからない。
一刻を争うときに、無駄な時間を費やしたくはない。
それに、案ずるな。
たぶん、おまえが心配しているようなことにはならない」
そう言うとデュークは懐剣を握りなおし、眼前に立ちはだかる高塀を仰いだ。
(たぶんここに、あの公爵が英国から伴ってきた姫君でもいたのだろう。
そして運悪く賊たちの逃亡に巻き込まれた。
それを公爵が救いに出たのだ。
そうでもなければあの公爵が、自ら進んで他国の事件などに関わり合うはずがない)
デュークは確信し、意を決したようにフロベールを顧みた。
「わたしは、もうひとりを連れ戻しに行って来る。もうひとりはおそらくまだ生きている
だろうから」
「えっ」とフロベールは、驚いたように見返った。
「その男はどこにいるのです?」
「この塀の中だ」
「塀の中ですって? まさかあの館へ行かれるのでは?」
フロベールが、あからさまに不安な様子を示した。
「一度陛下にご報告して、陛下のお名で正式な使者を立てていただいてから、伺ったほう
がよろしいのでは――」
「そんなしち面倒くさい手続きを踏んでいたら、明らかにできるものもできなくなるよ。
一人がこれでは、もう一人とて、いつまで持つかわからない。
一刻を争うときに、無駄な時間を費やしたくはない。
それに、案ずるな。
たぶん、おまえが心配しているようなことにはならない」
そう言うとデュークは懐剣を握りなおし、眼前に立ちはだかる高塀を仰いだ。