この恋だけ、
『お前じゃなくて、蒼です。今自己紹介したばっかですけど…記憶障害!?』


『死ね。』


即答された。


ガラガラッ
またドアが開いた。


『検温の時間ですよ〜』


若い看護婦さんが入って来た。


『あ、高屋敷さん。目、覚めたんだ?』


看護婦さんが、満面の笑みで言う。すごく、感じのいい笑顔だ。


『はい、ついさっき。』


『そっか。あ!隣の折原君と仲良くしてね。同い年だし、この部屋二人だけだから。』


体温計を渡しながら、看護婦さんは言った。


ちょっと待てよ。


同い年はともかく、二人だけって何!?


四台もベッドあるのに、なんでよ…


『はい、今折原君と話してたんですよ。すごくいい人ですよね。』


折原をちょっと見て、ニッコリ笑った。


『そうでしょ、すごくいい子で、評判なんだよ。』


いい子で評判?


折原が?


『言い過ぎですよ、』


折原が話に入って来た。
見たこともない、笑顔で。

『そんなことあるわよ、患者さんのなかでも噂になってるわよ。』


後でくるから、体温計っておいてね、と言って看護婦さんは機嫌良さそうに、病室を出ていった。
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