オフィスレディの裏の顔
まもなくして、ライブが始まるとそれまで壁沿いにはけていた女子たちが一気にステージのマイク前に集まってきた。立ち見でファン同士が押し合ってマイク前を、ボーカルの目前を取り合う形で最初圧倒されていた私も、すぐに同化しファンを押しのけて前に行っては後ろに流され・・・を繰り返しているうちにマナブも同じことをし始めていつのまにか体が密着して触れている状態が続いた。その間ずっとよっちに申し訳ないな、と思いながらなるべくマナブと目を合わさないようにボーカルの顔を見続け、手を伸ばして黄色い歓声をあげていた。

そうして2時間ほどでライブは終わり、冬なのに汗もでて少しぐったりした。

「いやー興味なかったけど、参加すると面白いね!」

「興味なかったの?」

「えーだってあいつ歌下手じゃん。」

「じゃあなんでライブ一緒に行くって行ったの?」

「・・・」

「そんな理由だったら、他の人誘いたかった。行きたいっていう人他にいたのに。」

2人の間に気まずい空気が流れた。

「ご飯食べて帰ろうよ。」

「ごめん・・・」

「なに?」

「疲れたから帰るよ。」

「え!久しぶりに会ったのに。」

「ごめん。」

マナブは不満そうな顔をしてたけど、私は自分の意見を押し切った。駅まで一緒に歩いて、そのあとバイバイした。そしてすぐによっちにメールをした。

「ライブ終わって今帰ってます。」

するとすぐによっちから電話があった。

「ライブ早かったな。」

「うん、終わってすぐ帰ってきたよ。」

「元彼とごはんでもしてくるかなーって思っとったけど。」

「そうしたら嫌でしょ?」

「まあな。でもすぐにバイバイじゃ、元彼もかわいそうやな。」

「どっちの味方なの?」

「いや、俺はそれでうれしいで。で、ライブはどうだったん?」

ボーカルのカッコよさや、熱烈ファンに押し潰されそうになったことなど話すと、よっちも楽しそうやな、行きたかったな、とうらやましがっていた。やっぱりよっちと行きたかった・・・
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