オフィスレディの裏の顔
「前に会ったとき、北海道に住む話をしたの覚えてる?」

「えぇ。」

「土地を買って今準備しているんだ。それでね、美鈴ちゃん・・・僕・・・僕はバツイチだし年だってすごく離れてるけど、お金の面で苦労をかけることはないと思うんだ。だから僕と・・・」

なに!?これはプロポーズ?バツイチだったこともびっくりだけど、あんな出逢い方だったし、かと言って私には手も触れないし、まさかそんな風に私を思っていてくれてたとは思ってもみなかった。お金持ちの割り切った遊びというか私への同情だとずっと思っていた。いや思いたかった。私は答えに困って、黙って恵一さんの目をみた。たぶん、私が断ればこれきり彼と会うことはないのだろう。封筒を最初に渡された意味が今わかった。これまで約3年、私は彼にお世話になった恩がある。赤坂のお店にはまらなかったのも彼のおかげ。なのにお断りするなんて冷酷すぎない?

「ごめんなさい。私やっぱり・・・」

彼ね愛情に気づかないフリをしてここまできたけど、結局最後は自分も心苦しくて涙がでてきた。

「いいんだよ、泣かないで。僕と美鈴ちゃんじゃ有り得ないことは承知だよ。最後だから僕の気持ちを言いたかったんだ。」

「本当にごめんなさい。」

恵一さんと最後の別れをした。
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