【禁断の恋】赤い嘘【完】

深く追及してこなかった椎名くんの優しさが胸に突き刺さる。


人望も厚く誰に対しても優しい椎名くんと付き合えば、幸せになれるかもしれない。


でももし仮に椎名くんと気持ちのないまま付き合っても、私は椎名くんを心の底から好きになることはできないだろう。


私の心の中にはいつだって兄である星矢がいるから。


何故私は星矢を好きになってしまったんだろう。


何故私は星矢の妹なんだろう。


もう何百回もそんな事を思った。


どんなに考えても答えなんて出るはずがないのに。


「……ハァ………」


口から出てくるのは溜息ばかりで。


もうすぐ授業が始まる。


気持ちを切り替え、化学室の入口の取っ手に手を掛けた瞬間………―――

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