お家に帰ろう。
そんなある日のこと。


〜シャカシャカシャカシャカ〜♪

ソファーの辺りから、ケータイの着うたらしき音源が聴こえてきた。


「ん!はーちゃん忘れてる!」

「戻ってくるわよ。」

馴れたもので、優雅にお茶をすする母親。


長く続くそのメロディーに、メールではないと判断した明は、

「本人からだったり!“持ってきて〜”とか?」

音の方へと近寄った。


クッションの間にケータイを見つけ、中を覗き見ると…

“翔太”


「ヤバっ!違った。」

「置いときなさい。」

慌てて元に戻した時に音は鳴り止んだ。


「…例の彼氏かなぁ?」

「かもね。今はケータイばかりで、家の電話にかけてこないから、相手が見えなくてね。」

「声で分かるぅ?」

「話し方で分かるの。」

「だから心配なんだ。」

「ま、わが娘の視る目を信じるしかないわね。」

「同じ遺伝子持ってるかな〜?」


ばたん!ドタドタドタ!


「ホラ帰ってきた。」

「忘れた〜!!」


明は白々しく伝える。

「さっき鳴ってたよ。」

すると遥は、ケータイをいじりながら

「行ってきます!」

無反応で出て行った。

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