お家に帰ろう。
この春、やっと芽が出そうな遥の恋を、あたたかく見守ってあげたいと思う明は、将人にすら、この件については黙っていることにした。


そんなこととは知らない遥も、
特には何も言ってこない。


多少、経過が気になる明ではあったが…
最近、哲司が来ないので、まったくもって状況が分からなかった。


(電話でもしてみよっかなぁ)


なんとなく電話をかけてみたが、

トゥルルル・トゥルルル………

なかなか出ない。


「ま、いっか。」と、

切ろうとした、その時!


「もしもし?」

「あ、…あれ?」

なんとなく声が違くて、

「あー、市川だけど。」

「えー!!」


驚いた明は、耳から離した電話の画面を見た。が、
哲司の携帯番号に間違いはなく…

「どーして?」

確認のつもりで尋ねた。


「荷物を預かってて。」

「そーなんだ。」

「名前見て、どーしようかと思ったんだけど…長かったから」

「だよね。急ぎでは無いんだけど、わざと出ないのかと思って。」

「今アイツ出れないんだよ。」

「何で?」

「バイトの面接中。」

「…へー。」

< 236 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop