お家に帰ろう。
明の実父、大貫が上條家を訪れるには、明からの的確な指示がなければ、実行は難しかった。


父親が非番の日で、将人もバイトで実家に来れない日。
さらに、遥の帰りが遅くなることなど、そんなタイミングの重なる日が、大貫に分かるはずがなかった。


なんとか話が出来たのも、
上條夫妻以外の者が留守だったからであって………


弥生が哲司に電話をするなんて、明の計算にはなかったのだ。



バイトを終えた将人は、実家からの着信歴に気が付いてはいたものの、哲司からのメールを読んでいたため、まず先に、哲司に電話を入れた。


「おまえ、ナニ言ってくれてんの?」

「だって、てっきりマサマンに居ると思って…」

「マサマン?」

「マサ君のマンション。」

「馬鹿だろ?」

「明がマサ君を慕ってることは、皆、分かってるから大丈夫だよ。変に勘ぐらねーって!」

「おまえは気付いたじゃねーかよ。」

「それは俺の勘が良いから…あ、弥生さんも結構なもんだよねぇ?」

「…そーなんだよ…怖いんだよ、あの人…」

「母親だろって。」

「…継母なんだ。」

「…え?」

「俺の母親は死んでんだわ…俺を産んですぐに。」

「…」

「あ、これ、遥は知らないからヨロシク。」

「…マジ?」

「そ。だから俺、明とは全く血が繋がってないの!」

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