お家に帰ろう。
事は着々と進められ、
明の苗字は“大貫”へと変わった。


こんな状況では、学校に通い続けることは不可能だったため、明はやむを得ず、高校を中途退学することを納得した。


出産後、何かしらの方法で、また考えることにして…

とにかく今は安静を優先にしてたのだった。


今では話し合いの方も、これからについて、前向きな事ばかりとなり、

別荘から戻った明は、将人以外の上條家の人を招き、大貫家にて食事会を開いていた。


香りの強いおかずに、つわりを我慢する明。


そんな様子を逃さなかった弥生が、秘かに、明を気遣う姿を見て、

「やはり、この家で暮らすのは難しいかもしれないですね。私に経験が無いために、明さんの様子に気付いてあげられないのではないと、少し心配です。」

と、大貫夫人。


「早いうちに、将人さんと一緒に婚姻届けを出しに行かれた方が良いかもしれないわね。」


その言葉は、明を、そして上條家の人々を労る、とても優しいものだった。


こうして、明が大貫家で大事にされていることが分かり、
安心して上條家へと戻った三人は、テーブルを囲んで、お茶を飲んでいた。


「ふふふ。」

「何だ?」

「ごめんなさい。順序が違うのは、うちの家系だなぁって思ってね。私も、明も、その母親の葉月も…」

「そーだな。」

「変なトコは似なくて良いのにね。」

「私は似ないから安心して!」

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