お家に帰ろう。
大貫康太郎が弁護人を連れ、再び上條家を訪れた日…


そこには、将人の姿は無い。


遥は自分の部屋に籠もり、
そして、その隣りには、
上條家の真相を詳しいほどに知る、哲司が一緒に居た。


「テツはさ、この家の何?」

「…自分でも良く解らない。」

「…私は何なんだろう?」

「?どーゆーこと?」

「…私ね、ずっと思ってたことがあったの。まーくんも明も、いなくなっちゃえば良いのにって…」

「!」

「そしたら…本当に、居なくなっちゃったよ…」


遥は声を震わせ言った。


ベッドに座って俯く、遥の膝に、一粒の涙が滲むのが見えた時……


「俺が居るじゃん。」


哲司はそっと遥を抱き寄せた。


「え…」

「俺がそばに居てやる!これからも、ずっと!だから、泣くなよ。な!」


すると遥は言った。

「ムリ。」

「え?!」


焦った哲司は、遥を離して、顔を覗き込んだ。


「だって、そんなこと言われたら、嬉しくて…もっと涙が出てきちゃうよぉ」


そんな言葉に、哲司はたまらず、さっきよりも数倍強い力で、
遥を抱きしめるのだった。
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