お家に帰ろう。
それから数日のこと――


「将人、大事な話がある。意地を張らずに電話をしなさい。必ずだぞ!」


留守番電話に、父からのメッセージが入っていた。


「なんだっつーんだよ…」


将人は明日、大貫家へ行き、明と婚姻届けを出しに行くことになっている。


そうなるまで、すべて大貫が間に入り、敏男とはいっさい話していなかった。


あの日から時間も経ったことだし、
大貫と話すうちに気持ちも落ち着き、夫人の計らいにより、明と二人で会わせてもらえることもあった。


完全に冷静さを取り戻し、
大切な日を明日に迎えた今、
確かに、きちんと父親とも話しておくべきと考え、敏男に電話をする将人…

これで、何一つ曇りもない気持ちで、明日を迎えるつもりでいた。


「話って、何?」

「あぁ、落ち着いて聞けよ。」

「…」



その数時間後、
将人は、明の眠る病院のベッドの横に立っていた。



父親の話によると………

その日の夕方、
大貫家に、明の悲痛な叫びが響き、
慌てて夫人が駆け寄ると、
腹を抱えて座り込む明の周りに、
大量の血が流れていたのだとか…


すぐに救急車で病院に運ばれたのだが、すでに、お腹の子が助かる見込みは無かったらしい。


今はまだ、原因は解っていない。

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