お家に帰ろう。
そんなある日のこと――


「入るぞ。」

「…つか、入ってるじゃん!」


明の部屋に哲司がやってきた。


「で?」

「なにが?」

「分かってんだろ?」

「…」

「…やっぱムリ?」

「ムリってことじゃナイんだよね〜。」

「じゃあ何?」

「何って…何も無いから…。」

「…あ…そーゆーこと?」

「そーゆーことって?」

「イッチーがさ、明には他に好きな奴が居るんじゃねーかって!」

「!」

「あんな成りして、マジで奥手でさ!」

(あ。)


ふと、喋るのが苦手と言っていたことを思い出し、

「あん時はガンガンきてたのに。」

「あれ、かなり頑張ってたよアイツ。バスケの時みたくイケって言っといたんだよ、俺。」

「あ、そ。」

「ホントだって!バスケの時のアイツ、マジで別人だから!今度観てみ…ヤバイから!」

「あー。試合があるって…でも、誘われてないしぃ。」

「…なんだよ。落ちてたんだ?」

「べつに」

「そーゆー奴なんだよ。分かってやって…な!」


その夜、寝る寸前になって、
初めて自分からメールを送る明だった。

< 32 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop